猫の勝手口
この世には人の家の門よりはるかに多く、猫の勝手口がある
たとえば草木のしげみのひときわあおみの深いところ
たとえば石の塀の上の道のもっとも細くあやういところ
たとえばみなわの湧くうみのほとりの枯れ木やなきがらの流れつくところ
そのようなところに立ちどまって、じっとあちらを見つめているうちに、なにかに見られているような気がしてきたなら、きみの運は巡り合わせががよい
もしきみがそのようなはざまを見かけたなら、はじめはおそるおそるのぞきこんでみるといい
それからしだいに鷹揚に、顔が入るなら体も通るのだ、ぬるりとひといきに飛び込んでしまうのだ!
そのときわたしは見た
なにを?
永遠の空と月、それをよけて隠れる星影の草むらを抜けたその先にある、無限の暖炉の夢を
昼の眠りをさまたげるのはいつだって、夜のカーテンがめくれあがるわずかな間の、あの衣擦れの音なのだ
なぜ?
そこにすべてをおもうがままにあきらかにしてひらくことのできるささやかなすきまがあるからだ
そしてきみはちいさくなったおのれの身をなげくけど、それから、細くふかふかとした毛並みをみつけて、あわれな気持ちはすぐにどうでもよくなってしまうだろう
這うか、寝ころぶか、足音をひそめて耳を澄ませるか
よろこびたまえ
きみは昨日よりもぜんぜん、今日からは自由だ。